平成22年6月11日(金)

土気城跡の保存と活用を求める要望
 千葉県千葉市緑区土気町の土気城跡は、九十九里平野を見渡す台地先端に位置し、15世紀末から16世紀末までの戦国時代、上総国北東部を中心に勢力をふるった土気酒井氏の居城の跡として知られています。空堀・土塁などの遺構の遺存度は良好であり、城下集落もほぼそのまま現在に存続しているなど、戦国期の城郭の特徴をよく残す城郭跡であり、考古学的歴史学的に重要な文化財です。また城主土気酒井氏は法華宗妙満寺派に深く帰依し、領内全域を改宗させ、「七里法華」と伝えられたほど、影響は及びました。その信仰は現在もなお土気酒井氏の旧領に該当する千葉市・市原市・茂原市・白子町・大網白里町・東金市におよぶ地域に住む住民多数に生きており、土気城は信仰とともに語り継がれ守られてきた宗教的聖地でもあります。ここに土気城跡をはじめとする関連城郭、社寺等の有形無形の文化財・伝統・自然・風土からなる文化圏が形成されているといえます。これは全国的にも注目される文化現象であり、その中核をなす土気城跡は、歴史的見地だけでなく文化的見地からみても、高い価値をもつものです。
 ところが、土気城跡の中枢部(本丸、二の丸)は、40年ほど前より日本航空が所有していたところ、同社の経営再建の一環として、2010年5月高齢者住宅の経営を目的とする民間企業に売却され、その保存・活用が危惧される事態にいたっています。過去10年以上にわたり千葉県郷土史研究連絡協議会・土気城を守る会・全国城郭研究者セミナー等から、千葉市等へ再三再四の保存要請があったにもかかわらず、史跡指定・保存への絶好の機会を逸したもので、遺憾といわざるをえません。国民的財産である文化財を将来の世代のために保存し、現在の住民のために活用することは、行政の最も基本的な責務であります。これまで土気城跡の保存問題のために努めてきた行政努力をさらに進展させることを期待します。
 文化財保存全国協議会は、関係行政機関が土気城跡の歴史的意義と文化遺産として地域に果たす価値をしっかりと認識し、下記の事項を実現することを要望します。
                               記
1.すみやかに土気城跡を千葉市(県指定・国指定)の史跡として保存すること。
2.文化財保護団体や地権者との協議の場を設け、文化財調査・保存整備の具体的な検討を進めること。
3.土気城跡を千葉市周辺のまちづくりと都市計画のなかに活かす計画を策定すること。

以上、決議します。
2010年6月11日
文化財保存全国協議会鞆大会第41回総会