●環状盛土と「分水嶺を越える貝」
T花さんより教えてもらったので、すっ飛んで行った。近くなので日没前に現場に到着。なるほどその気でみると、中央がくぼんで周囲が高くなっている。規模といいなだらかな盛り上がりといい環状貝塚でよくみる地形である。とくに林の際の東側の高まりは明瞭。 以下、高橋誠・林田利之・小林園子2001を参考に記述する。
*****
「くさかりぼっこみ」。環状盛土をともなう縄文時代後期・晩期の拠点集落跡(中期末葉〜晩期安行3c期で、中心は加曽利B〜安行式期)。鹿島川中流域左岸。佐倉市坂戸字草刈。別称「若衆山」(ワケイシュヤマ」。四街道市との市境付近に位置し、国道51号線が貫通する。大局的にいえば、東京湾岸と印旛沼南岸との中間に位置する内陸遺跡である(→衛星画像)。
環状盛土上は標高約34m。中央窪地標高は客土をふくむ現状で約32m。比高差約2m前後である。出土遺物としては、土器のほか、垂飾・土偶・耳飾・石棒などが耕作中に発見されている。なかでも台付浅鉢土器(安行3a式)が注目される。発見時、内部に鹹水産を主体とする(海水に生息する貝の)貝層がつまっていた。貝種は90%近くがイボキサゴ。5.87%がハマグリ、そのほかシオフキ、アサリ、アラムシロ、ウミニナ、マガキ、イシガイ。汽水産のヤマトシジミも1点。千葉市の東京湾岸まで直線で約10kmあり、交易によって得た貝であろうことが推測される(高橋誠・林田利之・小林園子2001)。東京湾までの直線ルート沿いに加曽利貝塚や千葉貝塚(貝塚町貝塚群)という環状貝塚の最密集地が存在することはおもしろい。言い換えると、草刈堀込遺跡は東京湾東岸の環状貝塚群の外縁部に位置する環状盛土遺構であり、東京湾で採取されたと推測される貝の小貝層をともなうなど、環状盛土と環状貝塚の性格を考えるうえでも重要な遺跡である。
※盛土遺構の分布のマークについては、以下の高橋誠・林田利之・小林園子2001の図面を参照した。
(参考)高橋誠・林田利之・小林園子2001 「縄文集落の領域と『縄文流通網の継承』―佐倉市坂戸草刈堀込遺跡発見の晩期貝層から―」『印旛郡市文化財センタ研究紀要2』73-100頁所収。
|